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そばの歴史


●いつから栽培されていたの?

日本でのソバの栽培の歴史は大変古く、最近の研究では、高知県佐川町の地層から見つかったソバ花粉の様子から、遅くとも縄文時代草創期(約9300年前)から栽培されていたのではないかと考えられています。


●ソバの発祥地は?

諸説ありますが、最近では中国西南部の雲貴高原あたりというのが定説のようで、日本へは

(1)朝鮮半島→対馬
(2)シベリア→北日本
(3)中国大陸→九州

などのルートで渡ってきたと考えられています。


●主食になったのはいつ?

縄文時代に栽培が始まったソバですが、主食になるのはずっと後のこと。
その最大の理由は、大量の製粉が難しかったことで、同じ理由で小麦も主食にはなりませんでした。
縄文時代は摺り臼(上下の石で摺り潰すタイプ)、弥生時代には杵で搗く「搗き臼」があったものの、こうした原始的な方法での製粉は多大な労力が必要なため、この頃は粒のまま食べるのが主流だったようです。

日本の文献上での最古のソバの記述は、「続日本紀(しょくにほんぎ)」(「日本書紀」の続編)にある養老6年の元正天皇の「勧農の詔(みことのり)」で、救荒作物として挙げられています。
ちなみに「古事記」「日本書紀」「万葉集」にも、他の植物・穀物は出てきてもソバは出てこないので、どうもこの時代になっても、まだまだ一般的な食物ではなかったもよう。

ところが鎌倉時代になり、中国から挽き臼が伝来すると、事情は変わってきます。挽き臼によって大量の製粉が可能になったため、そばや小麦などの粉食が急速に普及したようです。そのためか、平安時代と打って変わって、鎌倉〜室町時代の文献には、そばがさかんに登場するようになっています。


●そば粉料理の発展

鎌倉時代以降、そば粉を使った料理のバリエーションは確実に増えていきました。
一番簡単な「そばがき」を筆頭として、それを鍋で煮る「うきふ」「つみれ」「すいとん」。平面状にして鍋に入れ、熱を通してから味噌またはしょうゆ味のつけ汁につける食べ方。薄く焼いた「おやき」「せんべい」。中に餡を入れる「そば饅頭」や丸めて串に刺す「そば団子」等々。
鎌倉末期には、ソバが年貢として課せられた記録がたくさんあり、たとえば元亨四年(1324)の「山城国上久世庄年貢御公事用余事」には

「麦七石八升八号 秋畑蕎麦代五石九升五合」

との記述があります。

室町時代になると、そばはさらにさかんに食べられるようになります。
たとえば、公家の「山科家礼記」の寛正四年(1463)の記述には、

「御厨から蕎麦が贈られたので、一部を御所に献上した」

とあり、また

「庵主そばをかられ候」

という、庵の近くでソバを栽培していたことを示す記述もあります。

しかし、奈良時代から麺として食べられていた小麦粉に比べ、粘りの少ないそば粉は、麺にされるには、まだ時間が必要でした。


●「そば切り」登場

鎌倉時代から始まったそば粉の大量消費は、様々な工夫を経て、戦国時代に至り、ついに現在のそば「そば切り」に行き着きます。

現在日本で発見されている一番古いそば切りの記述は、「定勝寺文書」に見られます(定勝寺は長野県木曽郡大桑村の臨済宗妙心寺派の寺)。
この寺では天正二年(1574)に仏殿の修理を行いましたが、その時の「番匠作事日記」に落成祝いに寄進された品物があり、その中に

「振舞ソハキリ 金永」

という記述があります。つまりこの頃には既に「そば切り」作りが始まっていたのです。
実際にそば切りが作られ始めたのはこれより前、恐らく戦国時代からだと思われます。

このそば切りを巡る「そば文化」が花開くのは、平和な江戸時代になってからのことです。


●そば切り発祥の地は?

そば切りの発祥の地としては、信州説と甲州説があります。

(1)信州説
正保二年(1645)刊行の俳書「毛吹草」には、

「そば切りは信濃国の名物。当国より始まる」

とあり、また、松尾芭蕉十哲の一人、森下許六が宝永三年(1706)に出版した「本朝文選」(のちに「風俗文選」に改題)には、

「蕎麦切りといっぱ(いうのは)、もと信濃ノ国本山(もとやま)宿より出て、あまねく国々にもてはやされける」

という、許六の弟子・雲鈴による記述があります。

(2)甲州説
尾張藩士天野信景による雑録「塩尻」(宝永年間=1704〜1711)には、

「蕎麦切りは甲州よりはじまる。はじめ天目山へ参詣多かりし時、所民参詣の諸人に食(めし)を売に米麦の少なかりし故、そばを練りてはたご(旅籠)とせしに、その後うどむを学びて今のそば切りとはなりしと信濃人のかたりし」

とあります。


参考文献
「物語 信州そば事典」(中田敬三/郷土出版社)




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